映画『この世界の片隅に』

日曜の朝、ずっと観たかった映画『この世界の片隅に』を娘と観てきました。

広島の呉市を舞台に、戦時中の、ある女性の日常を描いた作品。
厳しい戦時下ながらも、ほんわかとしたテンポで粛々とストーリーは進んでゆき(勿論、時間が進むにつれ緊張感は増すのだけれど)、戦争そのものよりも、あくまで一生活者として、その当時の女性としての視点で描かれています。好きな絵を描いたり、工夫して料理を作ったり、夫婦や家族とのやりとりなど、日常を描いているが故のリアリティがあって。まるで自分もあの家で暮らしているようでした。観終わった今もジワジワと、あの風景が何処かにある感じがしています。
 

私自身、幼い頃に祖母の家の屋根裏部屋で見つけた戦時中の写真、古い時計、通学路にあった防空壕の跡など、昔の風景とリンクしながら、皆こんなふうに過ごしていたのかと思うと、本当に胸が締めつけられる思いでした。そして、おっとりとした主人公の女性が、慟哭するシーン。あの場面で彼女が言ったセリフが、グサッと胸に突き刺さって、目の覚める思いでした。

あの風景があって、今があるのだということ。これからも、私たちは繋いでいかなくてはいけない、ということ。

日々忙しくしていると、自分の周りの日常しか見えなくなるけれど、忘れてはいけない視点を思い出させてくれました。


唄も同じ。自分で何かを達成するというよりは、受け継いでいくということ。
年末に読んだインタビュー記事で大貫妙子さんも仰っていたけれど、その気持ちを忘れずに。

PS:コトリンゴさんの音楽も素晴らしかった。一瞬、大貫妙子さんの唄声と、坂本龍一さんのピアノかと...。